胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
胃潰瘍および十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が傷つき、潰瘍(ただれ、穴が掘れる)ができる病気です。 これらの潰瘍は、胃酸や消化酵素によって粘膜が自己消化されることで発生します。 心窩部痛やむかつきなどの症状がでますが、時に痛みなどがあまりなく急に出血や穿孔(壁に穴がああく)での重篤な症状で発症することもあります。 とても再発しやすいのも潰瘍の特徴の一つです。
がんでも潰瘍をつくることがありますので、特に胃潰瘍では胃がんとの鑑別が重要です。
十二指腸潰瘍は、胃潰瘍よりも若年者の10-20歳代の若年者にも起きやすい病気です。 十二指腸は壁が薄いので穴が空きやすい傾向にあります。
また、若い頃に十二指腸潰瘍があると、中高年になってから胃潰瘍ができやすいです。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因
原因としては第一にピロリ菌感染ですが、他の原因の割合が増加しており、解熱消炎鎮痛剤:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症:ジクロフェナック、イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)の使用、ステロイド薬などが挙げられます。アスピリンなどの抗血小板薬、また特に出血の原因として抗血栓薬もあります。ストレスや喫煙、アルコール摂取もリスク要因となります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の検査方法
胃カメラ検査
潰瘍や胃がんを早期発見するためには、胃カメラ検査がもっとも有効です。胃カメラとは、口や鼻からカメラのついたスコープを挿入し、胃の内部を観察する検査です。
また、特に胃潰瘍では胃がんなどとの鑑別が必要になりますので、生検組織検査を行うことができます。きちんと治ったか、また再発していないか、そしてピロリ菌感染が多いので、胃がんが併発してこないか、定期的な胃カメラ検査も重要です。
他に検診等で行われる胃X線(バリウム)検査がありますが、早期発見には胃カメラ検査の方が有効です。もちろん食道や十二指腸も観察します。
胃X線検査(バリウム)
放射線を使用して体内に異常がないかを調べる検査です。健診などで行われていますが、胃カメラより精度的に劣ります。放射線を使用しますので妊娠中の方は使用できません。
血液検査
ピロリ菌感染の有無を調べるために血液検査を行うことがあります。また、貧血の有無を確認するためにも血液検査が行われます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療方法
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療では、以下のような方法を検討します。
薬物療法
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB:タケキャブ)、またはプロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を強力に抑える薬で、潰瘍の治癒を促進します。H2受容体拮抗薬:胃酸の分泌を抑制する薬で、PPIに次いで使用されます。
粘膜保護剤、消化酵素薬:症状を早く抑えたり、潰瘍の治癒促進のために補助で使用することがあります。
生活習慣の改善
食事の見直しや禁煙、ストレス管理が重要です。アルコールや刺激の強い食べ物を控えることが推奨されます。
再発防止
原因の除去で再発を防止します。
ピロリ菌感染が確認された場合、胃薬と抗菌薬を使用してピロリ除菌を行うことで再発率がかなり低下します。解熱消炎鎮痛薬、抗血栓薬(抗血小板薬・抗凝固薬)、ステロイドなどを服用中の場合には、他の薬剤へ変更や、可能であれば中止をしますが、抗血栓薬やステロイドなど中止できないことが多いので、胃酸分泌抑制薬の長期併用を行います。
手術
薬物療法で改善しない重症例や、出血や穿孔などの合併症がある場合には、外科手術が必要となることがあります。
★胃潰瘍・十二指腸潰瘍を含め、病院での診療が必要な病気が発見された場合は、適切な病院を提案し、ご希望の病院を紹介いたします。
著者
院長 水野 滋章
学歴・職歴
- 日本大学医学部卒業
- 日本大学医学部 第三内科(現消化器肝臓内科)
- 日本大学大学院医学研究科内科学卒業 医学博士
- 東京都保険医療公社 東部地域病院 内科医員
- アメリカ国立衛生研究所(NIH)/国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK) 研究員
- 春日部市立病院 内科医長・内視鏡室室長
- 日本大学医学部総合健診センター 内科医員
- 日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科科長、内視鏡室室長
- 日本大学医学部 内科学講座消化器肝臓内科学分野 准教授
- 日本大学医学部兼任講師
- その他 非常勤:池上総合病院、聖路加国際病院予防医療センター、一部上場企業の健康管理センター、水野医院(武蔵村山市)、他
学会関連
- 日本内科学会 認定医
- 日本内科学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器病学会 認定専門医
- 日本消化器病学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本消化器内視鏡学会 指導医
- 日本消化器がん検診学会 認定専門医
- 日本消化管学会 胃腸科認定医
- 日本消化管学会 専門医
- 日本消化管学会 指導医
- 日本がん治療認定医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本カプセル内視鏡学会 専門医
- 日本カプセル内視鏡学会 指導医
- 日本医師会 認定産業医
- 東京都認知症かかりつけ医研修修了
- 日本消化器内視鏡学会 評議員、関東地方会評議員
- 日本消化器病学会 学術評議員、関東地方会評議員
- 日本消化管学会代議員、専門医制度審議委員会委員
大学勤務時代の
主な専門・研究分野
- 消化管および胆膵の内視鏡診断・治療
- 消化性潰瘍、消化管出血、薬剤性消化管傷害
- Helicobacter pylori菌感染症