大腸がんとは
大腸(結腸・直腸)の一番内腔側にある粘膜に発生する悪性腫瘍:がんです。
がんの中で大腸がんは、発生率は全体で第1位、男性でも女性でも第2位、死亡率は男性で第3位、女性で第1位と、がんの中でもっとも多いものです。
がんの発生の仕方には、2パターンあり、一つは「腺腫」という良性の腫瘍性のポリープが粘膜にできてがん化する場合、もう一つは粘膜から直接がんが発生する場合です。
大腸がんの初期症状はほとんどなく、自覚症状がないまま進行していくことが多いのが特徴です。がんが進行すると、血便症状や便通異常(下痢・便秘)、体重減少などの症状が現れます。そのため、定期的な検査とご自身の身体の異変を見逃さないことが重要です。
大腸ポリープ
大腸の粘膜に発生するいぼ状のできもののことを言い、良性と悪性に分けることができます。大きさは2mm程度のものから、大きいものだと2cm以上のものまで様々です。ポリープは放置するとがん化する場合もあるため、大腸カメラ検査の際に発見した場合は、切除することをおすすめします。当院では日帰りでの切除手術が可能です。詳細は下記に記載しております。大腸ポリープを切除することにより、大腸がんの発生と死亡率の減少につながります。
大腸がんのリスク因子
大腸がんの原因はいまだ解明されていませんが、日頃の生活習慣が発症リスクに影響していることがわかっています。食事、運動、睡眠などが不規則になっていると、規則的な生活を送っている人と比較して発症リスクが高いことが分かっています。
また遺伝も関連する疾患と言われており、ご家族のなかにがん、特に大腸がんを経験された方がいる場合には、定期的な検査をおすすめします。
検査方法
大腸ポリープの検査方法には大腸カメラ検査があります。
大腸カメラ検査により、大腸内部を直接観察することができるため、病変や異常の有無を精度高く検査することができます。大きさや形によりますが、ポリープが発見された際には検査に引き続きそのまま切除することも可能です。
大腸がんは早期発見・早期治療により完治可能な病気です。ご自身はもちろん、ご家族のためにもぜひ定期的な検査を行いましょう。
注腸X線検査(バリウム)は、以前は比較的良く行われていましたが、大腸カメラの挿入技術も発達し、カメラの方が精度が高いので最近はあまり行われません。放射線被曝の問題もあります。
大腸CT検査とカプセル大腸内視鏡検査は、腹部術後腸管癒着などでカメラの挿入が難しい方など、一部の方に行われることがあります。
内視鏡的大腸がん・ポリープ切除術
ポリープ、および早期がんでも病変のみを切除することで治癒が望める場合に行われます。切除による痛みはありません。
当院では大腸カメラ検査の際にその場でポリープを切除することが可能です。
大きさや形により、病院での治療が必要と判断した場合には、適切な病院を提案し、ご希望の病院を紹介いたします。
ポリペクトミー
大腸ポリープ切除では最も一般的な切除方法です。
内視鏡スコープの先端からスネアと言われるワイヤー状の器具を挿入して、ポリープを掴んで、高周波電流で焼きながら切り取ります。
コールドポリペクトミーでは高周波電流を使用せずスネアで締め付けることで、削り取るように切除する方法です。安全性が高い方法であり、当院では多くの場合、コールドポリペクトミーを用いております。
内視鏡的粘膜切除法(EMR)
ポリープやがんを切除する際に、ポリープの粘膜下層に生理食塩水などを注入し人工的に隆起させスネアで焼き切る方法です。大きめのポリープ・がんや平坦な病変を切除する時に行います。
内視鏡的粘膜剥離術(ESD)
大きな(主に2cm以上)ポリープやがんを切除する場合には、スネアでは掴めないので、病変の周囲を切開し、大腸壁の粘膜側を剥離する方法です。大きい病変に行う、技術的難度が高めで数名の医師スタッフが必要、時間がかかる、術中や術後の穿孔(壁に穴があく)や出血などの偶発症の発生がやや高めなどから、病院で数日入院して行われる手術方法です。
切除後の注意点
ポリープ切除手術を行った場合には以下のことに注意してください。
手術当日と翌日に控えていただきたいこと
- 入浴(シャワーは可)
- 刺激物、油分の多いものなどの腸に負担がかかる食事
数日間控えていただきたいこと
- 飲酒
- 激しい運動(重いものを持つなどの力仕事を含む)
- 旅行や出張
- 飛行機搭乗や潜水など、気圧変化の伴う行動
内視鏡以外の治療方法
外科手術
内視鏡切除では完治できない場合、がんが進行して腸閉塞の可能性がある場合などでは、外科的に大腸を切除します。病状によりますが、最近は全身に負担の少なめな腹腔鏡を使用した手術が増えています。
化学療法(抗がん剤)
手術前後の補助、転移や再発の発見時、手術不能な大腸がんなどに行われます。大腸がんは抗がん剤が比較的有効性が高いです。
放射線治療
直腸や肛門のがんで手術の補助、骨に転移して痛みの緩和などで行われます。
著者
院長 水野 滋章
学歴・職歴
- 日本大学医学部卒業
- 日本大学医学部 第三内科(現消化器肝臓内科)
- 日本大学大学院医学研究科内科学卒業 医学博士
- 東京都保険医療公社 東部地域病院 内科医員
- アメリカ国立衛生研究所(NIH)/国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK) 研究員
- 春日部市立病院 内科医長・内視鏡室室長
- 日本大学医学部総合健診センター 内科医員
- 日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科科長、内視鏡室室長
- 日本大学医学部 内科学講座消化器肝臓内科学分野 准教授
- 日本大学医学部兼任講師
- その他 非常勤:池上総合病院、聖路加国際病院予防医療センター、一部上場企業の健康管理センター、水野医院(武蔵村山市)、他
学会関連
- 日本内科学会 認定医
- 日本内科学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器病学会 認定専門医
- 日本消化器病学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本消化器内視鏡学会 指導医
- 日本消化器がん検診学会 認定専門医
- 日本消化管学会 胃腸科認定医
- 日本消化管学会 専門医
- 日本消化管学会 指導医
- 日本がん治療認定医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本カプセル内視鏡学会 専門医
- 日本カプセル内視鏡学会 指導医
- 日本医師会 認定産業医
- 東京都認知症かかりつけ医研修修了
- 日本消化器内視鏡学会 評議員、関東地方会評議員
- 日本消化器病学会 学術評議員、関東地方会評議員
- 日本消化管学会代議員、専門医制度審議委員会委員
大学勤務時代の
主な専門・研究分野
- 消化管および胆膵の内視鏡診断・治療
- 消化性潰瘍、消化管出血、薬剤性消化管傷害
- Helicobacter pylori菌感染症