下痢とは
便が泥や水のようになり、頻繁に排泄される症状を下痢といいます。健康な便の水分量は60~70%とされておりますが、何らかの原因により便の水分量が増えてしまう症状です。水分量が80~90%で軟便、90%以上になると水様便になるとされています。また、突然の下痢症状を急性下痢、発症してから症状が2-4週間以上続く場合は慢性下痢と分類されます。
下痢を起こす原因
暴飲暴食
下痢の症状が見られた際、発熱を伴わない場合は、飲みすぎや食べ過ぎが原因となっていることが多いです。特に疲れがたまっている際は、消化機能が低下しているので、注意が必要です。
香辛料などによる刺激
唐辛子やペッパー類、ワサビなど辛みの強い食べ物、油分・脂肪の多い食事は、胃酸の分泌量を増加させ、腸にも負担がかかり下痢を引き起こしやすくなります。
過剰なアルコール摂取
過度にアルコールを摂取することで、水分や電解質の吸収が悪くなり、体に吸収されない分、排出量が増加します。また、糖や脂肪の分解・吸収率も低下するため、下痢を引き起こしやすくなります。
細菌やウイルスの感染によるもの
病原性大腸菌、カンピロバクターなどの細菌や、ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス・アストロウイルスなど、何らかのウイルスに感染することで下痢を引き起こします。急性で、嘔吐や発熱、腹痛を伴うことも多いです。細菌やウイルスは、口から体内に入ることがほとんどであるため、調理の前後や、トイレの後に、石鹸での手洗いがもっとも重要です。ウイルスではアルコール消毒では不十分なことがありますので、吐物や下痢便の処理には手袋着用、塩素系消毒剤(ハイターなど)を使用しましょう。
薬の副作用
下痢になる一つの原因として薬の副作用の可能性も挙げられます。薬の種類によって多少異なりますが、1-2週間以内に下痢の症状が見られるケースが多いです。特に抗がん剤や抗菌薬、免疫抑制薬、痛風発作予防薬などで、重度の下痢を起こす事があります。
精神的ストレス
不安や緊張といった心因的なものや、不規則な生活や気候の変化などのストレスは自律神経のバランスを崩します。それにより、腸の粘膜からセロトニンという物質が過剰分泌され、腸の運動調節がうまくいかずに腹痛や下痢を引き起こすと考えられています。慢性的に症状がおきる過敏性腸症候群が代表的な病気です。
下痢を起こす頻度の高い疾患
過敏性腸症候群(IBS)
ストレスが要因とされる腸の機能的な疾患です。自律神経やホルモンの乱れが原因となり、大腸の蠕動運動が不安定な状態になることでお腹に痛みを感じやすくなります。そうすることで、腹痛と下痢、患者さんによっては下痢と便秘が交互におきるといった便通異常に繋がります。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に炎症が広がり、びらんや潰瘍が生じる炎症性疾患です。この疾患により下痢や血便、激しい腹痛などの症状が現れます。20代前後で発症することが多いのですが、小児から高齢者まで幅広く起き得る病気です。症状がおさまっても、大腸の炎症がじわじわと続いたり、再燃したりすることも珍しくありません。数年以上にわたり炎症が続くと大腸がんの発生リスクが高まります。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは、自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃する免疫機構の異常により発症し、原因不明の慢性的な病気で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類が挙げられます。急に発病することもあり、下痢や血便、腹痛などが続くといった症状で、原因不明なため治療を行っても、再燃しやすい病気です。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸の粘膜上にできるいぼ状の突起物を大腸ポリープと言います。ポリープは良性腫瘍であることがほとんどですが、放置を続けると大腸がんに進行してしまうことがあります。直腸やS状結腸の大きめの大腸ポリープや大腸がんにより、下痢や血便、便秘症状がみられることがあります。
食中毒やお腹の風邪
急な下痢の場合には、細菌やウイルスによる下痢を発症するケースも多く、病原菌やウイルスに感染している食物を口にする事で食中毒を起こします。この場合、下痢だけではなく、腹痛や嘔吐、発熱を伴うことも多くあります。
下痢の検査
上記に挙げたように下痢の原因は様々です。そのため、まずは問診・診察を行い、下痢の性質、色などについてお伺いします。その後、病状に応じて、便の細菌検査、血液検査、腹部レントゲンやCT検査、場合により肛門・直腸の診察などを行います。血液を混じる場合や慢性的な下痢については、大腸カメラ検査の必要がでてきます。これらの検査を行うことで、大腸内の状態や形状を観察し、下痢を引き起こす原因を探し、それらに異常がない場合にはIBSなどの機能的な疾患が考えられます。
下痢の治療法
検査の結果、もし何か病気の可能性が見つかった場合は、その疾患の治療を行っていきます。さらに精密検査を行う場合もございます。同時に脱水を防ぐための水分補給と、整腸剤などの処方で経過観察しながら治療を行っていきます。
比較的軽い下痢症状であればクリニック・病院を受診することなく治すことも可能です。まずは胃腸を休めるために、おかゆやスープ、鳥のささ身など消化が良いものを食生活に取り入れることが望ましいです。
最後に
水野胃腸クリニックでは下痢の症状でお悩みの方の診察を行っております。ご自身で治すことも可能ですが、いつもと違う、なかなか治らないという方は、消化器疾患を引き起こしている場合もございます。当院では痛みの少ない大腸カメラ検査も行っておりますので、少しでもご不安な方はお気軽にお問い合わせ下さい。
著者
院長 水野 滋章
学歴・職歴
- 日本大学医学部卒業
- 日本大学医学部 第三内科(現消化器肝臓内科)
- 日本大学大学院医学研究科内科学卒業 医学博士
- 東京都保険医療公社 東部地域病院 内科医員
- アメリカ国立衛生研究所(NIH)/国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK) 研究員
- 春日部市立病院 内科医長・内視鏡室室長
- 日本大学医学部総合健診センター 内科医員
- 日本大学医学部附属板橋病院 消化器肝臓内科科長、内視鏡室室長
- 日本大学医学部 内科学講座消化器肝臓内科学分野 准教授
- 日本大学医学部兼任講師
- その他 非常勤:池上総合病院、聖路加国際病院予防医療センター、一部上場企業の健康管理センター、水野医院(武蔵村山市)、他
学会関連
- 日本内科学会 認定医
- 日本内科学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器病学会 認定専門医
- 日本消化器病学会 指導医(大学退職まで)
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本消化器内視鏡学会 指導医
- 日本消化器がん検診学会 認定専門医
- 日本消化管学会 胃腸科認定医
- 日本消化管学会 専門医
- 日本消化管学会 指導医
- 日本がん治療認定医
- 日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
- 日本カプセル内視鏡学会 専門医
- 日本カプセル内視鏡学会 指導医
- 日本医師会 認定産業医
- 東京都認知症かかりつけ医研修修了
- 日本消化器内視鏡学会 評議員、関東地方会評議員
- 日本消化器病学会 学術評議員、関東地方会評議員
- 日本消化管学会代議員、専門医制度審議委員会委員
大学勤務時代の
主な専門・研究分野
- 消化管および胆膵の内視鏡診断・治療
- 消化性潰瘍、消化管出血、薬剤性消化管傷害
- Helicobacter pylori菌感染症